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『わさんぼん』という表題で、漢字で〈話三本〉と、フリガナならぬフリ漢字をふっ
てある。和モノ3本立ての公演である。舞台美術は能舞台を模してはいるが、柔らか
なタッチで、一ノ松、二ノ松などは、まるで、ぬいぐるみのようでカワイイ。暖かく
緩やかな演技空間となっている。
一人語り『要冷蔵の「愚行を繰り返す男」』作+演出+出演・要冷蔵。浴衣姿にカン
カン帽をかぶった要さんが、縁台に腰をかけて、自らの失敗談を漫談風に。要さん、
R1に出場するおつもりですか。
狂言『食道楽』作・北大路魯山人、演出・要冷蔵。美食家・陶芸家をはじめさまざま
な顔をもつ作者らしい「食べる」ということについての一考察が、台本となってい
る。わかりやすくて楽しいけれども、内容のその先の予想がつく。俳優のみなさん
が、狂言に挑戦している、という姿が、失礼な言いように聞こえるかもしれないけれ
ど、微笑ましかった。その経験は現代劇を演じるにあたっての糧ともなるだろう。
そして3本目が『しんしゃく源氏物語(末摘花の巻)』作・榊原政常、演出・神澤和
明。高校演劇のために書かれた台本だけれども、一般的にも(私の印象では)よく上
演されている戯曲だ。高校演劇にも芸術至上主義の上演にも耐えられるリーズナブル
な戯曲だろう。神澤さんの演出は、主人公の純情を、そのコメディ・タッチで描かれ
た世界観を活かし、仕掛けや小技で観客を楽しませながら、愛情をもって創りあげて
いる。
「末摘花」にしても、その時代の風俗には強いこだわりが無いようで、衣装も時代を
感じさせない。それには理由があるのだろうけれども、その自由さがこの公演全体に
あふれていて、空間そのままに暖かい。観客をこれでもかと楽しませてくれる。
男性ばかりで演じられる狂言と、戦後間もない昭和25年に発表された女生徒だけで演
じられた「末摘花」。はからずも劇団未来さんと同様、男性ばかり女性ばかりの2
チームの上演となった。