2020年08月12日

11日(鳥肌もの。)

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 矢代まさこ先生の未読の短編が掲載された「別冊少年チャンピオン」をゲット。

 まず、お目当ての矢代まさこ先生の作品はさておき、他の掲載作品を読んでみる。

1974年なのでもう、私にとってはマンガ全般にはもう興味をなくしていたころだ。

矢代先生以外に10人の作品。別冊の月刊誌なので、基本は読み切り、と謳いながら吉
森みき男さんと梅本さちおさんは、連載物。どちらも野球マンガでおます。この2作
は作家さんの実力もあって、平均点キープ。5点満点だとすると3点かな。

それから超ベテランで、一時は人気作家であった森田拳次先生の『ハーレム石松』
は、こりゃあなかなかのオモシロさ。森田先生といえば『丸出ダメ夫』やジョージ秋
山先生の師匠として知られるけど、『ハーレム石松』は劇画調なぶん、ジョージ秋山
先生のそっくりさんになってしまっている。ホントは立場が逆なんだけど、カー
トゥーン(ひとコママンガ)の研究のためニューヨークに滞在して、何年も日本を離
れているうちに、弟子にやられちゃったね。ジョージ秋山氏はいろいろな意味で凄い
才能の持ち主だからね。でも、ニューヨーク生活を引き払ってからの『ハーレム石
松』はタイトルが示す通り、ニューヨークのハーレムに生きる日本人を主人公とした
ハードボイルドなタッチの作品で、私は好きだな。5点満点で4点。

さて、書きづらいけど、残る7作品は、読む価値無し、と一蹴するしかない。吾妻ひ
でお先生は好きだけど、まだこの時期は、狂気の天才の片鱗をみせる程度で、まだ凡
人。

さて、で、お目当ての矢代先生の作品は『三郎の伝説』。これまた野球の話である。
ちなみにこの「別冊少年チャンピオン」には、もう一作野球マンガがあって、全11作
中4作が野球ものである。本誌「少年チャンピオン」では『ドカベン』人気の頃だし
な。

とはいえ矢代先生が描くのはニンゲンだ。田舎の高校を舞台として、はずむ会話とモ
ノローグでシリアスな心象風景を描き出す。読み始めて三分の一くらいでもう、私の
ページをめくる腕に鳥肌を湧きたてられた。こんなマンガほかにあっただろうか。ち
なみに全40ページの作品。

だいたいが冒頭からして、いや具体的に書くのはやめとこう、こんな出会いの設定
は、反則技を超越して、少女漫画への冒涜ともいえるかもしれない。だが、そんなこ
とはない、それを美しく清潔に表現するだけでなく、三郎とサキの人物造形に大きく
寄与しているし、この『三郎の伝説』の世界観にさえ連なるのである。

ラストの7ページは圧倒されて鳥肌がたちっぱなし。もちろん私が力説するまでもな
いが、絵そのものの魅力、詩的な文章、セリフの力、ドラマに即したコマ割りのリズ
ム感、巧いなあ。凄いなあ。ステキだなあ。ほかの作品とのレヴェルが違い過ぎて、
浮いている感がハンパない。5点満点でも100点。

だから、私は、矢代まさこ先生のマンガはすべて読みたいのである。絵が好きだから
持っておきたいのである。そうだ、矢代まさこ先生の少年漫画ばかりを集めた本って
1冊もないけど、作りたいなあ。

ちなみに「三郎」は野球の天才少年だけど、まだ「イチロー」は、この世に出ていな
い。
posted by yu-gekitai at 09:47| 京都 ☁| Comment(0) | キタモトのひとりごと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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