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「雨あがる」原作・山本周五郎、脚色・津上忠、補綴+演出・市川正、先斗町歌舞練
場にて。この劇場で芝居を観るのは2回目かな。たぶん25年か30年かくらい前に「岡
部企画」を観て以来だ。空間に関して、まったくその時と同じ感想だ。およそ7間ほ
どの間口に対してタッパ(高さ)が2間ほどしかない(私の目視によるもので正確で
はない)。横に細長いのだ。数年前には「鴨川をどり」を観せていただいているが、
それは基本、舞踊なので、それに舞妓さん芸妓さんが横一列に並ぶイメージがあるの
で、特に違和感はなかった。
そんな舞台なので緞帳があがると、まず違和感を感じる。前進座ではあまり見たこと
のない大黒幕が見える。ホリゾントがあったと思うんだけどな。そういう美術かもし
れない。バトンの照明器材も私の席位置からは見切れていた。こんなことは今まで観
せていただいた前進座の舞台では初めてだと思う。私の席は舞台に近かったから(1
等席ありがとうございました)。
でも、開演と同時に感じた違和感は、芝居が始まると吹っ飛ぶのだ。近いから俳優さ
んの声の力をまっすぐに感じる。立ちすじ、身のこなしの明瞭さ大胆さに改めて感心
させられる。岡部企画をこの劇場で観た時と同じ感想、というのは、芝居に引き込ま
れて、舞台のタテヨコ比率のオカシサなんてどうでもよくなるのだ。いやそれ以上
に、好ましいもののように思い始めるから不思議だ。タッパの低さからテント芝居の
匂いを感じ取るのだ。芝居というハレの世界であること、役者さんの演技とそのドラ
マに楽しませてもらえるのだ、という安心感を感じ取るのだ。
さらに個人的なことだけれど、遊劇体で二度の公演を打たせていただいた、今はもう
ない五条楽園歌舞練場に思いをはせた。五条楽園のそれを一回りくらい大きくした先
斗町歌舞練場は、そこいらにあるホールや劇場と全く異なる異世界で、緞帳があがる
前から、なにかしらデキアガッテいる、と強く思う。その意味ではテント芝居との近
似性がやはり強い。いや、テント芝居みたいだった、という称賛のしかたは前進座さ
んに失礼かもしれないが。
芝居そのものも存分に楽しむことができた。私は前進座の俳優さんが好きだなあ。い
つからか中嶋宏太郎さんが気になっているし、今回主役の早瀬栄之丞さんも良かっ
た。ツアーの千秋楽だったからか、カーテンコール後に、出演者全員ひとりずつ挨拶
をしてくださったのもご愛敬とはいえうれしかったな。私、単なるファンじゃん。
2023年01月18日
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