今回の公演タイトルについてよく訊ねられました。
言い訳めいた解説をさせていただくと、大事な会合であるのに錯綜して、なんじゃこ
ら、という状態になってしまうこと。問答(正しい使い方ではないかもしれません)
が台詞の大半を占めること。で、なんじゃこら、もんどう。町内会の役職に就くこと
になった登場人物たちなので、主水、という、ダジャレもいいとこなんですが、気に
入ってます。
生まれた時から隣近所で生活を共にしてきた者たちの、次期の町内会役員に選ばれて
の初会合です。年寄りが大勢集まったら、しかもみなさんおしゃべりが好きだった
ら、こんな状態と化すのではないでしょうか。それぞれがマウントの取り合いをす
る。自分に興味のない話題には無頓着で、自分の言いたいことは声に出さずにはいら
れない。思わず童心に帰ってしまう。
しかもそのおしゃべりの内容はと言えば、自分が生まれ育ったムラが抱える矛盾や歪
みを、決して幸福ではない状況を、語ることになってしまうのです。
ですから、『なんじゃ主水』は、作者にとって、寂しく哀しいお芝居です。それゆえ
でしょう、登場人物全員が愛おしくてなりません。
劇作としては〈掟破り〉の作風に挑戦しました。会話がスムーズに進まない、途中で
途切れる、突然に差しはさまれる話題、泥酔者(?)とのかみ合わない会話、漫画か
らの唐突な引用など、舞台に展開するお芝居の空気とは裏腹なくらい台本としては実
験的です。それゆえ、俳優のみなさんには大きな負担をかけました。
いつも通りの簡素な舞台です。座布団しかありません。みなさまのイマジネーション
に助けていただきながらの上演です。見えないものは想像してくださいね。それが
〈エンゲキ〉だと強く思っている、という持論の披瀝はひとまず置いときます。
堅苦しい説明になってしまいましたが、喜劇的な要素もあり、楽しんでいただけるお
芝居だと思います。気楽にご覧くださいませ。
今回、中学生の頃に『李さん一家』というマンガに出会って衝撃を受け、以降、愛し
続けてやまぬ、つげ義春氏のマンガから、いくつもの台詞を引用させていただきまし
た。
さらに、この台本を書かずにはいられない気持ちにさせてくれた、私の住む町の、大
切な先輩友人のみなさんに多大なる謝意を表したいと思います。
2023年11月28日
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久しぶりの観劇でした。以下に感想書きました。ありがとうございました。
https://note.com/20201230neko/n/nbf56c8b382b7