2023年11月28日

27日(『なんじゃ主水』公演パンフレットの作文。)

今回の公演タイトルについてよく訊ねられました。

言い訳めいた解説をさせていただくと、大事な会合であるのに錯綜して、なんじゃこ
ら、という状態になってしまうこと。問答(正しい使い方ではないかもしれません)
が台詞の大半を占めること。で、なんじゃこら、もんどう。町内会の役職に就くこと
になった登場人物たちなので、主水、という、ダジャレもいいとこなんですが、気に
入ってます。

生まれた時から隣近所で生活を共にしてきた者たちの、次期の町内会役員に選ばれて
の初会合です。年寄りが大勢集まったら、しかもみなさんおしゃべりが好きだった
ら、こんな状態と化すのではないでしょうか。それぞれがマウントの取り合いをす
る。自分に興味のない話題には無頓着で、自分の言いたいことは声に出さずにはいら
れない。思わず童心に帰ってしまう。

しかもそのおしゃべりの内容はと言えば、自分が生まれ育ったムラが抱える矛盾や歪
みを、決して幸福ではない状況を、語ることになってしまうのです。

ですから、『なんじゃ主水』は、作者にとって、寂しく哀しいお芝居です。それゆえ
でしょう、登場人物全員が愛おしくてなりません。

劇作としては〈掟破り〉の作風に挑戦しました。会話がスムーズに進まない、途中で
途切れる、突然に差しはさまれる話題、泥酔者(?)とのかみ合わない会話、漫画か
らの唐突な引用など、舞台に展開するお芝居の空気とは裏腹なくらい台本としては実
験的です。それゆえ、俳優のみなさんには大きな負担をかけました。

いつも通りの簡素な舞台です。座布団しかありません。みなさまのイマジネーション
に助けていただきながらの上演です。見えないものは想像してくださいね。それが
〈エンゲキ〉だと強く思っている、という持論の披瀝はひとまず置いときます。

堅苦しい説明になってしまいましたが、喜劇的な要素もあり、楽しんでいただけるお
芝居だと思います。気楽にご覧くださいませ。

今回、中学生の頃に『李さん一家』というマンガに出会って衝撃を受け、以降、愛し
続けてやまぬ、つげ義春氏のマンガから、いくつもの台詞を引用させていただきまし
た。

さらに、この台本を書かずにはいられない気持ちにさせてくれた、私の住む町の、大
切な先輩友人のみなさんに多大なる謝意を表したいと思います。
posted by yu-gekitai at 07:53| 京都 | Comment(2) | TrackBack(0) | キタモトのひとりごと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
キタモト様

久しぶりの観劇でした。以下に感想書きました。ありがとうございました。

https://note.com/20201230neko/n/nbf56c8b382b7
Posted by オタケ at 2023年11月28日 09:52
遠方よりのお運び、コチラこそ感謝です。ご自愛を。
Posted by キタモト at 2023年11月29日 09:29
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