2025年01月19日

18日(大阪放送劇団を観た。)

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『こんにちは、母さん』作・永井愛、演出・今西俊夫、A&Hホールにて。

テレヴィ・ドラマにも、映画にもなった、有名な舞台作品。悪かろうはずのない良質
な内容が、あらかじめ保証されている。ストイックさを感じさせる堅実な演出と、空
間の広がりのある舞台美術も成功している。選曲を含めた音響もそつがなかった。
が、ホールの器材によるものか音質が残念な気がした。

私が観せていただいた回は、13時過ぎに開演して、シンプルなカーテンコールを含め
ての終演時間は16時過ぎだった。休憩10分強をはさんだが、全く長くは感じなかっ
た。なぜならドラマの虜となっていたから。

私流にいわせていただけば、カラオケ演劇(オリジナルが別の劇団あるいは制作者に
あるものを、借りて上演する公演のことです)なのだが、この舞台によって、オリジ
ナルであろうが、借り物であろうが、良いものは良い、ということを知らしめていた
だいた。

今から私が書こうとしていることは、自分でもちょっと書くのがオソロシイと気が引
けている。だがしかし、素直になって書き記すとすると、・・・感動した、というひ
とことになる。戯曲も素晴らしいと思うが(戦争に関するくだりは要るのかなあと
思ったりもするけど)、俳優に、である。主人公の神崎福江を演じた増田久美子さん
の演技に度肝を抜かれ、震えた。度肝を抜かれたといっても、なにも突飛なことをし
ているわけではない。口跡、トーン、台詞の距離感など、そんな技術的なことは、完
璧に超越していて、舞台、そこに、増田さんが演じる福江が存在していることに感動
したのだ。これは、リアリズム演劇であるがこその凄さであると思う。なにか、舞台
上に、であるにもかかわらず、ニンゲンの真実がそこにくり広げられていると私は受
け止めた。上手な演技、良い演技にも、上には上があるもんだ、と今更ながら、次元
の違うレヴェルの演技を体験した。ちなみに、舞台の上での増田さんを拝見するのは
初めてだ。ずっと以前に観せていただいた大阪放送劇団の公演では、確か演出を担当
しておられて、出演されていなかったと記憶している。こんなふうに大絶賛してしま
うことが、なんだかわからぬが、自分自身でオソロシイと感じているのだ。

トップが素晴らしいからであろう、ほかの俳優陣もまた見事なアンサンブルを見せて
いて、琴子アンデション役の弥武敦子さんをはじめ出演者のみなさんが、このドラマ
時間の精度を磨き上げることに大きく貢献をしていた。当たり前のことであるが、客
席最後列であった私にも、すべての台詞がクリアーに届いた。俳優のみなさんの、声
が、リズムが、テンポが、すべてが、心地よい舞台だった。

蛇足だが、私は増田さんによる、ギリシア劇やシェイクスピア劇、あるいはポスト・
ドラマ演劇、またはアングラ演劇的な観客席に語る(ような)演劇など、リアリズム
演劇とはまた異なる手法を要求される演技も、観てみたいなあと強く思った。いち
ファンになってしまっている。
posted by yu-gekitai at 11:01| 京都 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | キタモトのひとりごと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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