『五人のアルベルティーン』作・ミッシェル・トランブレイ、翻訳・吉原豊司、演
出・しまよしみち、未来ワークスタジオにて。驚きの仕掛けの戯曲。こんな手法が
あったのかと、くやしい。似たことはやっていたが、本作のように明確に大胆不敵に
仕組んで上演するということには全く気がつかなかった。これはまさにエンゲキであ
るからこそ可能な表現だと思う。また、未発表の海外現代戯曲の紹介初演という意義
も大きい。劇団未来さんは実に有意義な仕事を成したと思う。
主人公は老人ホームにいる70歳のアルベルティーン。その部屋には30歳、40歳、50
歳、60歳のアルベルティーンも同居する。そして話相手のマドレンもまた。マドレン
はすでにあの世の人である。つまり、すべては70歳のアルベルティーンの幻想である
のだ。自身の人生について、それがあたかも他人同士でるかのように会話し対立す
る。ひとりの女性の苦難の人生が浮き彫りにされる。結婚、出産、夫の戦死、義母と
の生活、子どもたちとの葛藤、薬物中毒。アルベンティーンの人生を通してカナダと
いう国家の頽廃とその時間軸も語られることになる。
渡辺舞さんの舞台美術は、未来ワークスタジオに、夜の孤独な一部屋を、吊り下げら
れたオレンジ色の電球と星々で、まるで知られざる宇宙のどこかのように飾る。薄明
りのある二段構えの星空が、ラストにあっという変身(?)を遂げる。月下の狂気
か。私には3度ほど語られる〈におい〉の意味をつかみ取ることはできなかったけれ
ど、観劇途中で、死臭ではないのか、と思われて怖ろしくなった。
かなりの衝撃度のある舞台で、もう一度観たいと思わせられた。俳優6人の緊密度が
もっと深化するだろう余白も見えたのが、少し心残り。
2025年11月25日
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